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龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
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【クク主drago】たわむれかんきんぎんのおり 7

自分が何をしているのか分からなくなってきた為、再び息抜きをかねてのヒドイ小話続き。
下手な情けは仇になるよという教訓(?)の話です。

小連休を使い潰しても終わらないのは、阿呆な小細工に走っているからなのだと理解しているけれども止められないという自縄自縛中。
同人誌風にしたら面白いかなあ、と血迷ったのがすべての元凶。
しかし今は簡単に作成してくれるオンラインツールがあるんだなあ、とも感嘆。
ちょっと意外と楽しいなこれ、と。文明の進化に感心した次第です。

以下、ヒドイ続き。
どこかに救いがあった筈。

※ちょっとだけ絶望感を追加しました。








すぐ隣に、甘い声で囁いてくる男がいる。
蕩けた目で見つめ、腕を伸ばして自分とは違う色の髪に触れては何が嬉しいのかふわりと微笑む。
「っはは……おまえはほんっとにきれーだよなあ」
くすくすと笑う声がする。とろりと溶けた声音で話す男の銀色の髪に視線を留めながら、組み敷かれた人物は重い溜息を零しそうになった。

「エーイート。あいしてる」
常に焦燥に駆られ、常に不安そうにしていたククール。
遂には、自らに幻惑と混乱の魔法を掛けてしまったらしい。ふわふわとした言動でエイトの名を呼び、愛を告げてくるその顔には幸福たる色が刷かれている。幻惑による偽ものの色が。
「エイト。エイト。なあ、エイト。……あいしてるぜ」
ククールに背後から抱きしめられて――いや、拘束されているせいでエイトは動けない。体力は前日の「暴食」ですっかり削りとられていたし、そのせいで気分が悪くて果物だけしか口にしなかったから、回復していないままなのだ。

(……ククールの癖だっけ)
南方の砂漠。竜骨の迷宮が舞台となった、兄妹喧嘩。
泊まったその屋敷で初めて見たククールの寝相が、確かこのような形だったことを思い出す。
ものに抱き着いて眠るという姿勢には、いくつか意味があったのだったか。

「愛しい」、「安心」、それから――「寂しい」

(俺はここにいるのに、まだククールは寂しいのか)
背中越しに伝わる熱を感じながら、エイトは何とも言えない気持ちになる。
やはり、ククールが見ているのは自分ではなく「誰か」で、求めているのもその相手なのだ。しかし、その本命が手に入らない――相手にされていない?――から、こうして俺を代替品にして満たしているのだろう。
けれど、所詮は代わり。身代わり故に心は満たされず、隙間から零れていくばかり。
だからククールは際限なく抱いて、身勝手に自分の欲望を中へ吐き出すのだと、エイトは考えた。
碌に器を見もせずに注ぎ入れるものだから、いつも溢れて足を伝うその白いどろりとしたものが、とにかく気持ち悪い。
かといって、込み上げ逆流する怖気を目の前で返しても、ククールは笑うだけ。――嗤うだけ。その様子に何かしらの喜悦を覚えているのか、ククールはエイトの汚れを綺麗な水で洗い流し、清潔なタオルでもって進んで後始末をする。
そこに嫌悪はない。……親切からでは決してないだろう笑みを浮かべて、エイトを丁重に扱う。ガラス細工を手にした子供は、いつ飽きてくれるのだろう。


――いつになったら、その手を離してくれる?


「エイト、すきだ。すき、どうしようもなく、すき。……すきなんだ、あいしているんだ、エイト」
「……」
共に横たわり、耳元で呪詛のごとく繰り返し囁かれる愛の言葉を聞いている――聞き流しているエイトは、氷の相貌に少しの影を落として息を吐く。

無意味な時間だ、と思う。
けれども、今日のククールは大人しいので心情的には助かっているのもまた然り。
時々、エイトの首筋に顔を寄せて口づけたり、首に添わせた手を滑らせて静かに甘えてくる以外は害のない現状。
しっかと縋りつかれて動けないところが問題ではあるけれど、態度はこちらのほうがずっと良い。……酷くされないで済むから。
解かれ、無造作に広がっている銀の髪。
ククールがエイトを腕の中に抱き込むようにしている為、その銀糸がエイトの肩口からするりと流れ込んできてくすぐったい。
「ふふ。おまえのだきごこち、さいこう。すき。すきだぜ、ぜんぶ。ぜんぶ、おれの。おれだけのものだ」
起きながら見る迷夢というのはどういうものだろう。
エイトをぎゅうと抱きしめ、首筋を軽く噛み、舐めて甘える姿は猫のよう。
魔法の効果のせいだろうが、今のククールは理性を解き、緊張を緩ませ、すっかり油断しきっているように見える。

今なら脱出できるのではないだろうか。
思考がふにゃふにゃと曖昧な今ならば、拘束の抱擁も解けるだろう。この氷牢を抜け出し、外へ出られるかもしれない。

けれど、ああ。

エイトはそろりと顔を動かし、肩越しより上へと目を向ける。すれば視線に気づいたククールが、どうしたとばかりに顔を覗き込んできた。
巻き付いていた腕が動いて、エイトの首元へ手の平が張り付く。背後から顎を軽く掴むと、くっと持ち上げた。

「どうした、エイト?」


この不安そうな目をしたこどもを捨て置けない。


「……何もない」
それだけを答えれば、アイスブルーの目が細められ、天使の顔が痛みを受けたように歪む。
「そっか。…………そうだよな」

少しだけ、自惚れていた。
これだけ体を重ねてきたのだから、馴染んできたのだと。
最近は逃げることもなくなっていたから、許してくれているのか、と。
そう、思っていた。

……少しは、拠り所になれているのかと……いや、ああ、これすらも――まぼろしなのか。


突きつけられた現実に、甘い夢が壊れる。
「……お前の中には俺が”いない”んだな」
不意に声音が変わる。澄んだ空色から昏い血の色へ。
急激な変化にぎくりとし、エイトが言葉を紡ごうと口を開けば――「ぐっ」
指が突きこまれ、侵入してきた指先がエイトの舌へ伸ばされた。逃げ場などなくあっという間に探りあてられた舌は指先で挟まれ、捏ね上げられ、ぐちゃぐちゃに弄ばれる。
「っふ、ぁ、ク、ぇあ」
なにを、いやだ、やめてくれ、と。語ろうとする言葉を崩されたエイトはただ口の端から零れる唾液の不快感に耐えることしかできない。
身を捩じって逃れるには、既に遅く。抱擁というには強すぎる締めつけの中、エイトの耳元で笑う声。

「何も無いなら俺で埋めてやるしかないよな」
溢れるのなら、もっと奥まで注いで。
零れるのなら、もっと奥まで捻じ込んで。
何度も何度も何度も。
揺すって、その感情を強請り上げてやる。
揺さぶって、その理性を揺さぶり落としてやれば、きっと。ああ、きっと。

「お前の中は俺でいっぱいになるはずだよな」
血の色と空色の声が混じる狂気を見せて、堕ちた天使が微笑う。

――ひゅっ、と。
エイトの喉が鳴る。

言葉を間違えた。「何でもない」と言うべきだった。
伝える言葉を間違えて――ああ。狂気を呼び起こしてしまった!
腿の間に嫌な質量感のある肉塊が押し付けられ、ずるりと滑るのを感じて覚えるのは後悔。
「ぅ、あ」
それはエイトの足の奥にある同じものへ擦りつけられ、擦り上げられる。乾いていた肌が湿りはじめ、ぬちぬちとした粘着音が聞こえ始める。嫌な音、嫌な感覚。
これではまるで強制的な自慰行為だ。嫌悪感が込み上げ、エイトは前のめりになって嘔吐く。
「う、っあ……ぐ――ぅえっ」
口の中を掻き回す指の感触、足の間を行き来する熱の感覚、望まぬ快楽へ誘導されて意識が霞む。
悪寒に包まれたエイトの体温は既に下がり、また冷たくなっているというのにククールはどれも止めようとしない。
それどころかエイトの耳を軽く食み、そこへまたくすくす笑いを吹き込む。

「大丈夫だエイト。お前は俺で満たし続けてやるから。だから、な」


――安心して壊れてくれていいんだぜ?


腿の間からぬるりとしたものが抜かれ、それはいつもの場所へと移動し、そして――。
「――っ」
一息に深く突き入れられた。肉の引き攣る痛み、無理やりに埋め込まれた異物に対する嫌悪感がエイトを襲う。
ぐちり、と聞こえた粘着音は上からか下からかそれとも耳元か。

そして、今日もまた。
哀れな囚人は、どこもかしこもぐちゃぐちゃに汚されていく。


憐れみを見せたが故の罰だとでもいうように。


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