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龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
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【マル主】疲れた時には甘いものを

現在も黙々と切ったり貼ったり繋げたり直したりしつつ、少し先が見えてきたような無いような。
作業合間の息抜き&文章作成リハビリ兼ねて、メッセ返信感謝御礼をば。

宜しければ以下、続きよりどうぞ。





――それは敬慕か欲望か。

「自己管理がなっていない。」
「この暑さだ。仕方ないよ。」
サヴェッラ大聖堂。空中に浮かぶ館にある教皇の部屋に、彼らは居た。
中央の執務机に座るは、この部屋の主であるマルチェロ。手にした書類に目を通し、疲れた溜息を吐く。
「だからと言って、この数日で五分の一の人員が業務停止だというのは怠慢だろう。いや、軟弱か。」
「今年は特に気温が高いらしいから、それもあるんだろう。俺だって、ちょっと辛い時があるし。」
「……適切な補給はしているのか?」
「あはは、大丈夫だよ。」
「どうだか。そう言って、お前は毎年倒れるからな。あまり信用はしていない。」
「酷っ!……くもないか。まあそこの辺りは自覚してるし、反省してるよ。……何か、ごめん。」
「自己管理を怠っていないのならば、構わん。謝るな。」
「うん。」
雑談しながらも、二人の手は止まっていない。それぞれに書類に目を通し、押印またはサインなどをしては、処理済みの箱の中へどんどん放り込んでいる。
「ところで、現状は?」
「人が抜けた穴が目立つ部署には、代替を置いた。警備のほうはトロデーンからの一時出向で、どうにか。」
「そうか。色々手間を掛けさせて、済まないな。」
「気にするな。マルチェロに何かあったら、俺が嫌だからな。」
少しの談笑に、少しの軽口。
余裕らしきものが窺えるのは、山となっていた未処理の書類の高さが半分になってきたせいか。
終わりが見えてきているのもあってか、互いに笑う。

「はっ。可愛いことを言う。」
「そうだろう。大いに可愛がってくれていいぞ。」
――そこまで言った時、ハッとなったのはさて誰だろう。

「……ほう? 良いのか。」
印章を置き、顔を上げるマルチェロ。そうして真っ直ぐにエイトを見つめれば、相手は首を横に振る。
「いや、いやいやいや。待て、良くない。今のは違う、間違いだ!」
顔が赤いのは、外気のせいではない。勤務中だというのに、何とも甘ったれた台詞を口にしてしまった自分を恥じているのだ。
「言葉を間違えた! か、可愛がる、じゃなくて……ええと、ほ、褒めてくれていい!だ。」
「……。」
このところ、仕事に追われていた。
権限を行使して招請した、大国の兵士長。だというのに、初日から今に至るまでしたことといえば、二人揃って黙々と仕事の処理だけ。
勿論、不埒な目的でエイトを借りたわけではない。本当に忙しいので、知にも武にも長けている彼の手を借りたかったのだ。
そこに、邪な気持ちは一切無い――と言い切るほどには、エイトとの関係は浅くない。

(そういえば、こいつはこれでいて甘えたがりだったな。)
この数日、忙殺の日々ゆえかエイトは特に何も言ってはこなかったが、深層では不足していたのかもしれない。色々なものが。
マルチェロは深呼吸に似た息を吐くと、顔を赤くしたままこちらの出方を窺っている兵士を見返して口を開いた。

「休憩をとる。準備しろ。」
「え?」
「疲労したままでは効率が落ちる。そろそろ頃合いだろう。」
「え、あ、でも……まだ、三時になってない――」
「教皇命令だ。」
「……分かりました。」
唐突な休息命令に、腑に落ちない顔をしながらも部屋を後にしたエイトを横目に、マルチェロは首元を緩めて天井を仰ぐ。
「ここで一つ、糖分補給をしておくか。」
一人呟いたその口元には、苦笑に似た穏やかな笑み。
けれどもその思考は、狡猾ながらも甘い策が一つ。

さて――どうやって「堕落」させてやろうか?

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