忍者ブログ

龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
MENU

【クク主drago】誰が為への蜂起宣告

■うたた寝「Dragoクク主」版。

兄から弟へ――というわけでもないんですが、まあこっちもちょっと狂信ですよと。
ククさんは、神様なんていないんだ!(いや本当はいらっしゃるんだ……)みたいなちょっと難しい感じの性格だと思うので、色々あれこれしたらばこうなりました、ら……。

更に狂信者になりました。ドウシテコウナッタ!
幾らでも狂っていいと言われたので(言い方)

確か公式ガイドブックでヤンガスに、「斜めに構えているけど純粋な気持ちで神様と向き合っている」みたいなことを言われていたので、そこも基点になっている。それはそうと、ヤンガスの着眼点が凄い好き。

それでは、以下より続きをお読みください。
愉しんで頂けましたら幸いです。狂信をお裾分け。






騎士団の教えの一つに、「神への献身」というのがある。
真っ白いシーツのような子供の頃には、それは素晴らしいものに思えた。事実、オディロ院長から丁寧に教えを聞かされ、神についての聖書などを読んでもらうのは嫌いじゃなかった。
あの穏やかな声。
あの優しい手。
神様は常に我々を見守っていて下さる、と。

しかし、太陽の匂いを含んだ真新しいシーツは、とある時期を境に泥に塗れ、日陰の中へ。
その場所において、美しさは地獄への入場券でしかなかった。
それも払い戻しは無く、自らの意思で退場することも出来ない泥沼の檻行き。
首から下げたロザリオは、ただの金属へと成り下がり。
聖書の文句は、ただの言葉の羅列へと成り替わった。
女でないだけマシだったのか。いや、どちらにせよ、行く先は同じ煉獄模様でしかなかっただろう。
子供の悲鳴に興奮する大人がいるなんて、知らなかった。あの冷たい懺悔室に行くまでは。
否応にも行わなければならない祈りの儀式に至っては、口にするソレを味のないものに変えて欲しいと何度祈ったか。――祈りは、ついぞ神に届くことは無かったが。

(――思い出なんぞ、くそくらえ。)
あんなもの、回顧などして何になる。思い返したところで嫌な感覚が蘇るだけだ。
はっ、と零れた息は嘲笑か溜め息か。
少なくとも、今日みたいな天気のいい日に考えることではない。
ククールは靄のようなそれを払うように頭を振ると、街道の途中で立ち止まった。
見上げれば、日差し穏やかな太陽と透き通った青い空が目に入る。以前ならば特に気にもしなかったが、いつからだろう、このような自然美も気に留めるようになったのは。

空の青に触発されてか、ふと脳裏を過ぎったのは氷の美貌を持つ青年。

(……なるほど。あいつの影響か。)
口元に苦笑が浮かぶ。淀んでいた胸中から、毒が抜けていく気がした。
これも女神の加護か? なんてな。
浮かんだ思考を今度は嘲笑ではない感情で笑い飛ばし、再び街道を歩き出した。
ラパンハウスより東の方角。サザンビークへと続く、ベルガラック街道。
そもそもの発端は、マイエラ教会の告知板に貼られた小さな紙。拙い字は子供のものだろう、そこには依頼が書かれていた。

『びょうきで ねている いもうとに おはなみをさせたいです』

教会は、依頼を出す場所ではない。
そういったことは酒場にでも貼るべきだ。
けれども、子供が頼ったのは神のお膝元。聖堂騎士が集うマイエラ教会。
幼き子羊の声を聞かずに何が聖堂騎士か!――と、誰が言ったか。それは拾い上げられ、何と団長殿の元へと回されたのである。
いつの間にか、清浄化しつつある騎士団。それもこれも女神様の効果か、とククールは他人事ながらに無駄に盛り上がる熱気を茶化していたが……まさか、その件が自らの元に回ってくるとは思いもよらず。

「なんで俺なんだよ!」
「他に適任がいないからだ。」と鷹の目を思わせる厳格な団長殿は、早速に抵抗を見せた“反抗期的”な部下に言った。なおも愚痴めいた抗告をする彼の部下に、団長殿は笑みを返す。
「お前は経験があるのだろう? ならば、さぞ良い絵が撮れるな。」
誰から聞いた、と追及する気はなかった。
この堅物皮肉冷徹男に、平気で接する人物など一人しかいない。むしろ、それしかない。
尚もその場にいれば、挑発でもされかねない。なのでククールは上司命令に渋々従い、子羊の悩みを解決するべく、聖堂騎士として教会を後にしたのだった。

おはなみ、でピンときたのは桜の樹のモンスター「さくらんじゅ」。魔物でありながらもその外見は桜色の花を咲かせる大樹で見ごたえがあり、その写し絵を手に入れて子供に渡せば一件落着となるだろう。
そう考えて街道を歩いていたのだが、なかなかそれらしきモンスターが見当たらない。

「確か、この辺りじゃなかったか? ……もう少し奥に行ってみるか。」
そうして歩みを進めていた矢先、サザンビーク手前に差しかかったところでククールの足は止まる。

小高い丘の上に、それはいた。
遠目に分かる大樹。その地面に広がる、薄いピンクの色彩。
正体は、さくらんじゅの花びらが落ちて積もったものであり、まるで絨毯のようになっていた。
――その色彩の中に、ぽつんと青い人影が一つ。
胸の前で両腕を組み、さくらんじゅに背を凭せ掛けて地面に腰を下ろしたその青年には見覚えしかなかった。

「エイト!?」
腰の細剣に手を掛け、思わず走り出していた。
なんだ。
なにがあった。
大丈夫か――、と。
声を掛ける為に丘を駆け上がったククールは、途中で息を飲むことになる。

――透明な世界がそこにあった。

大樹は、己がモンスターだというのを忘れているのか、氷のような美しさを持つ男に背凭れにされるがままになっている。彼が身につけている青いチュニックには、さくらんじゅの淡い桜色の花弁が落ちていて、まるでそこにも花が咲いているようだった。
エイト、と。
声を掛ける代わりに側へ近づく。
その際、さくらんじゅが警戒したように僅かに身を揺らして睨み付けてきたが、ククールが剣を納めて「ソイツとは知り合いなんだ」と声を掛けたところ、樹はエイトとククールとを交互に見遣った後で目を閉じた。
言葉が通じたのだろうか。それ以前に、このモンスターがエイトを守っていることに驚いた。
……そういえば、どこかの町に桜の樹が出現して一時、そこが観光名所になった――というの聞いたことがあるが、もしやコレか?
何者かによって討伐された際に改心し、その後を着いて回っていた桜の樹……。

(……まさか、な。)
それが真実だとして、何だというのか。とりあえず、眼前の光景は幻ではないのだ。
「おーい、女神様。こんなところで何してるんだ。」
掛けた声音は、囁き。
その真横にて片膝をつき、ククールは俯いている相手の顔を覗き込む。
「……完全に寝てるな、これは。」
片手で、そっとエイトの前髪を持ち上げてみる。
目を閉じているせいか、氷の相貌からはいつもの冷気は感じられない。長い睫毛が白い肌に映えていて、男だというのに美しい。

(相変わらずだな、この女神様は。)
綺麗な外見の男など、全く興味は無かった――それこそ忌むべきものだと考えていた――が、まさかここまで興味を引かれるとは思わなかった。

初めて会ったドニの町にて、戯れに仕掛けた行動を思い出す。

乱闘始まる酒場の騒動から抜け出した後でも、彼の青年はどこまでも無表情でいた。
冷めたその態度が気に入らず――美形ってのは、たいがいクールぶってる奴が多い――なので、驚いた顔が見たいのもあって、つい悪ふざけをした。
その手をとり、口づけを落とした――が、見事不発に終わったのは言うまでもない。
氷の彫像めいた青年は、どこまでも平然としており、騒いだのは彼を兄貴分として慕う山賊上がりだろう中年の男と、勝気そうだが美人な少女。
当人であるエイトといえば、顔色一つ変えず、ただ静かな眼差しで見返していただけ。
闇の色よりもなお深い色をした、黒瞳で。
人形以上に硬質な、ぞくりとする氷の美貌で。
いま思えば、あの時点で絡めとられていたのかもしれない。――だから、彼の手を取りそこへ口付けたのか。
あれは手の甲だったか、それとも手首の方だったか。

敬愛か、欲望か。

「お前はどっちだと思う?」
髪に触れていた手を更に下げ、顎を軽く持ち上げる。
軽く開かれる唇。
無防備な隙間。
初めて会った頃のエイトならば、とっくに目を覚ましているだろう。いいや、コチラが近づくことすら許さなかった筈だ。彼の氷の気配は、とにかく他を畏怖させる。畏敬と共に。
いつの間にか許されていたのか、この距離を。
そうならば、嬉しいことだと思う。
だが――。

「――あまりにも無防備なのは良くないぜ、女神様。」
くくっと笑い、自ら作った間隙へと唇を寄せた。
少しだけ内部を味わい――深く侵食するのは気が引けた――、は、と短く零れた吐息を慌てて飲み込む。
エイトは、まだ目を覚ます様子はない。疲れているのだろうか。
――そういえば。

(こいつ、少し前に誘拐されたばかりだっけか。)
どこで目をつけられたのか。エイトには、一代で成りあがった趣味の悪い成金貴族によって攫われた事がある。勿論、公にはしていない。醜聞になる前に、きれいさっぱり隠ぺいしたので。
その件でククールがしたのは、こういうこと(もみ消し)に長けたどこぞの騎士団長殿に、“善意の一般市民”からの情報提供。
当の貴族の評判は、エイトに対しての悪行から窺えた時点での想像通りというべきか、見事に黒でしかないものでいたので、幾らも同情心が湧かなかったのは幸いだった。
エイトの身柄を保護した後はもう、真っ直ぐに落ちてもらった。
血は流していない。彼の女神様が、それを止めたので。

「本当にお人好しだよな、お前は。」
もし救けがなかったら。助けられなかったら。
その身はどうなっていたのか、彼は知っているのだろうか。
他に人気がないのを良いことに――側にいる桜の大樹は、エイトに危害を加えない以上は何もしてこないだろう――ククールは、エイトに語り掛けながら色々な場所に触れていく。

「まあ、助けなんかなくたって」――ひと房とった髪先に、そっと口づける。
「お前ならきっと、一人でどうにかしていたんだろうな」――閉じた瞼に、軽く唇を押し当てた。
「でも、な。」
そこで、静かに大きな溜息を吐き……エイトの両肩を掴んで、抱き寄せた。

「――裸であの場に立っていたお前を見た時は、流石に頭がどうにかなると思った。」
裸とは言ったものの、下半身はいつものパンツを履いていたが、それでも彼は剣を手にしていたのでククールたちが駆けつける直前までには何かがあったのだろう。
なにか、が。
想像など、欠片もしたくはない。
当人は「何もされてはいない」と例の無表情な氷の美貌で答えたが――話せない、話したくない何かがあったとしたら。

成金貴族の処遇が、その場で即決したのはいうまでもない。

流血は避けた。生命の保証もした。……そう、あれは生きている。煉獄島の地下で。
死ぬよりも辛いことがあるのを知らないようだったから、絶賛体験中だ。ああ、無料だから幾らでも継続してもらって構わない。
情けは掛けない。地下室を持っていて、そこにも幼い被害者たちが居たから。
憐みすらも与えない。

何故ならあれは、女神を穢そうとしたのだから。

「……お前に何かあれば、俺は」――その首筋に顔を埋め、静かに脈打つそこへ口づけた。つい感情が昂り、軽く歯を立ててしまったところでエイトが軽く呻く。
「……ん。」
僅かに眉間が寄っていた。
桜の樹からの視線を感じ、そっと身を離す。
エイトは少しの間、眉間の皺を消さなかった。だが、ククールがその肩へと腕を回して背中を軽く叩いているうちにそれも緩やかに溶けていった。
あとにはまた変わらぬ氷の美貌。頭上からの視線も、いつの間にか無くなっていた。
ふー、とククールは何度目かの溜息を吐く。

「……よし。どうにか戻ってきた俺の理性。」
ククールはエイトの肩を抱き直すと、彼と同じようにその場に座り込んだ。そして、その状態からようやく大樹を見上げて撮影機を構える。
とりあえず、忘れないうちに依頼は達成しておこう。――はい、パシャリ。
少し角度を変えたものを何枚か写した後、それを鞄に仕舞いこむ。――任務完了。
そうして、改めてエイトと共に肩を並べて桜を見ることにした。
それは、いつまで?――当然、相手が目を覚ますまで。

不可侵の女神。
静寂たる聖域の影にて、その禁忌は破られて。

神は、さてこの血迷いかけた子羊をどうしようかと考える。

彼の羊は、かつて神に純粋な祈りを捧げていた信者であった故に天罰など落とすわけにはいかず――救いの手が遅かったことにも負い目があるので――出来るならば、救いあげたいのだけれど。

かつての子羊は、笑う。
その救いの先に、こいつがいるならば手を取ってやってもいい。
だが、いないのならば話は別だ。もはやその御手は必要ない。
俺にはこの女神だけがあればいい。
この存在を守るためならば、自ら手を穢すことすら厭わない。

俺の祈りはここにある。
なあ、女神様?
忠誠めいた歪んだその感情を胸に抱くは、銀色の美しい獣。
かつての純粋な信仰心は、そっくりそのまま手の届く女神へと移される。

神は、どうにも複雑な笑みを浮かべるしかない。
眼差しは、神聖なる宝玉が壊れてしまわないように頑丈な檻の中へと閉じ込める子供に対して懸念する親に似たものではあった。

拍手[0回]

PR

× CLOSE

× CLOSE

Copyright © 龍宴庭note : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]