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龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
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【マル&クク主drago】十六夜誘い誘う月 1

■いざよいいざないさそうつき

友達と飲み会なるものがしたい!エイトと、マイエラ兄弟たち。

本来ならば書き上げてから掲載したほうが良いのですが、現状では書ききるかすら分からない体たらくっぷりで空白が長引きそうなので、もうこれは自身を追い込むためにも思いつつままに書き落としていこうと決めた結果の行動です。
ちまちま細切れ進行ではありますが、宜しければお付き合い下さい。






一年の終わりが近づく時期になると、週末ごとに同僚や部下たちが揃って浮足立っていることがある。いまいち集中していないというか、気もそぞろといおうか。
――浮ついている、というのが一番しっくりくるかもしれない。

(なんだろう、友達と遊ぶ約束とか、で、で、デートとか、かな……?)
書類の小山に囲まれた机に、ひっそりと。
己の仕事を黙々と処理しながらエイトはこっそり兵士たちの様子を窺い見る。
ある者はこっそり耳打ちしては頷き、ある者は小声で会話した後に小さく笑い合っていた。
神経を研ぎ澄ませ、そっと聞き耳を立ててみたところ――今だけ盗み聞きを許して!――「お前が気にしてた、ドニの村のあの子も来るってさ」という会話内容が聞こえた。

トロデーンの一兵士と、村の少女が一体何を?
はてなと内心で首を傾げていれば、ふっと頭上に影が差す。正面に視線を戻したエイトは、畏まった様子で書類を手にした部下を見ることになる。
男はエイトに書類を差し出し、やや緊張した様子で口を開いた。

「お待たせしまして申し訳ありません! 本日分の書類はこれで最後です!」
「……ああ。」
そういえば、自分は彼の始末書を待っていたのだった。――浮つきすぎた果て、勤務中に起こしたミスが原因で。
大事にはならなかったものの、さりとて過小扱いはしない。きっちり賞罰と始末書を与えられたその兵士が、廊下の陰で同僚に慰められていたのをエイトは目撃していた。
(……まあ、こればかりは仕方がないよな。実際、ちょっと危なかったんだし!)
ちなみに彼の一兵士がやらかしたのは、馬小屋の馬を洗う際にうっかり背後に回ったことである。
エイトが即座に気づいてその腕を引っ張らなければ、兵士の頭蓋は砕けていたかも知れなかった。兜の縁が蹄に当たって欠けただけの被害で済んだのは僥倖ともいえよう。
(良かった、怪我しなくて)
心の中で部下を励まし――しかし顔は氷の無表情で――エイトは部下をじっと見つめて、言った。

「……以降は無い。留意しろ」
(結構危なかったんだから、今後は気をつけるように!)
すれば兵士はヒッと息を飲み――これ以上ない程に姿勢を真っ直ぐにして敬礼した。
「ハッ! も、申しわけありませんでした!」
そして思いきり深く頭を下げると、足早に部屋から出て行った。戸口で待っていたらしい同僚の元へ、逃げ込むようにして。
それを見て、エイトは「あー」と反省する。
しまった、既に叱責してるんだからここは優しく慰めてやるところだったかもしれない!
兵士は自分の追撃に、落ち込んだだろう。追い詰めるつもりは毛頭なかったのだが。

(あああ、ごめんー! せめて笑顔で会話すればよかったー! 俺の馬鹿ー! 馬鹿上司ー!)
心の中で泣き、嘆きながら、エイトは溜息を零すと再び書類仕事に戻って行った。





エイトの執務室より遠く離れた廊下の端。
二人の兵士が歩きながら小声で会話をしている。
「……っはああああ。なんだろうな、兵士長のあの憂い顔。いや俺が悪いんだよ。悪いんだけど、気怠いような雰囲気なのにあの美貌だから、こう、もっと叱られたくなるというか!」
「お前なー……分かる! あの綺麗な顔で凄まれるのは本当に怖いんだけど、それだけじゃなくて、もっと見つめていてほしくなるよなー。」
反省の色があるのかないのか。
とかく二人の兵士は苦笑を浮かべて廊下を歩いていく。
そのうち、一人がぽつりと零した。

「なあ。兵士長って、飲み会に誘ったら来るかな?」
「え。無理じゃないか。あの人って忙しいし、それに賑やかすぎるのって嫌いそうじゃないか?」
「ダメ元で! 誘うだけ誘ってみるのはいいだろ。断られたら、仕方ないなーで済むんだし。」
「まあ、エイト兵士長って寛大だしなあ。……部下からのお願い!ってことで、押したら来てくれそうな気はする」
「だよな!? よし、勤務時間が終わったら誘ってみようぜ! お前も来いよ!」
「俺もかよ!? まあいいけど。退勤後に兵士長の顔見たいし?」
最後は前向きに決心し、二人の兵士は兵舎のほうに消えていく。

城の外壁に続く外階段の影に、部外者がいたことなど気づくよしもなく。――彼らの技量では察知できぬほどに、その人影は実に上手く気配を消していたので。
外壁の端から赤と青の色彩がちらりと覗き……風が吹くのと同時に消えた。

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