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龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
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【マル&クク主drago】十六夜誘い誘う月 6

■転倒打撲超痛い

利き腕側の強打僕と手のひら擦過傷で、一日でズタボロになった状態より小話書き落とし。書きたいのだからしょうがない。
腕が痛みで自由が利かない、曲げられないので笑いっぱなしですが、それでも気持ちは強く持つ所存。
へこんだら負け。なんとなく。

以下、小話続きです。






ドニの酒場からの帰り道。
ルーラに頼らず、マイエラ兄弟の屋敷に続く道を歩いている俺は一人――ではなく、右にマルチェロ、左にククールがそれぞれいる。
男三人、肩を並べて――というにはどうにもその距離は近い。
俺は、俺が挟まれたこの状態を心の中で密かにマイエラサンドと呼んでいる。
ちなみに、夜だとマイエラカスクート。
夜のことなのに「朝食」というのはおかしな表現だが、夜は室内でベッドの中という環境のせいか更に密着度が上がり、それぞれが俺を挟んで抱き込むようにしてくるので、ますます具材の気分になるからだ。

(そういえば、最近は自室で寝てないなあ。)
夜道を「マイエラサンド」で歩きながら、俺は左肩に腕を回して凭れているククールをチラと見る。
それから右に寄りかかるマルチェロも一瞥し、視線を正面に戻した俺は少し月を見上げて、「ああ、そうか。」と思った。
そうだ、彼らが誘いに来るから俺は自室に戻っていないんだった。

彼らは私的にではなく公的に、トロデーンを通して俺に依頼を出してくる。それは所用、急用と様々だが、確かで必要な内容だったりするので王は承諾し、俺は素直に彼らに貸し出される事になるのだ。
勿論、強制ではなく事前にこちらの意思を確認している。
内容は、孤児院での手伝いや炊き出し、教会での奉仕活動の補助、騎士団での書類作成の援助などなど。
慈善関連が多いせいもあって王や姫はいつも感心し、感動するが故に自己の持つ最大戦力を貸し付けるわけだ。
俺の能力がちょっと認められているのは嬉しいが、過大評価ではないだろうかと思うのも事実。
まあ、俺としても役に立てるなら嬉しい。…子供相手の場合は、役立たずになるけれど。俺、無表情で口下手だから。

そんな出張が常習化しつつある近状だったが、しかし今日は依頼がなかったので、俺は同僚との約束を予定に入れたのだ。
だが彼らは偶然にも片田舎ドニの酒場にいて、そして急用があるのだと告げて俺を酒場から連れ出した。
――いや、引き取ってくれたというべきか。
なにせその時の俺は、先輩から絡み酒を受けていたので。

初めはずっと押し黙っていたから、これは上司である俺がいるせいだろうなと思っていたのだ。けれども同僚が酒を勧めて勧めて飲ませた途端にその口は饒舌になり、話し始めた。
内容は、他の兵士たちが過ごしている日常のこと。当たり障りのない相談――と、ここまでは良かった。
けれど、その内容が途中から恋愛?だか恋慕?だかの単語が出てきた辺りからややこしくなった。
女性の口説き方を教えてやる!と息巻いた先輩兵士の目が、語っているうちに怪しく据わり始めたのが境界だったのだろう。
俺の両肩を掴み(ちょっと痛い)、酒精で赤くなった顔を近づけ(お酒臭い)、何やらブツブツ呟きだした時に俺は対処に動けばよかった。
けれども、同僚からの誘いで嬉しかったのもあって躊躇ってしまう。
結果、俺は何故か先輩兵士に胸倉を掴まれ、そしてどうしようかとまだ迷っていた時に掬われたのだ。強引に。
ククールとマルチェロに、救われて。

(まさか二人も、同じ時間にドニで飲んでいたとはなあ。)
そういえば、絡まれていた時に知ってる気配を感じたあれはやはり彼らだったのか。
二人の間で月を見ながら、俺は偶然に感謝する。
偶然って、凄い。
……でも。俺は少し気になることがある。
確か今日は、二人ともサヴェッラで会議があると言っていたんじゃなかったか。ニノ大司教の手伝いをするのが面倒臭いのだと、寝る前にベッドの中で散々に愚痴をこぼしていたような……?
(早く終わったのかな。それか、日時が変更になったとか?)
ドニの村は確かにマイエラ修道院の近くだが、サヴェッラからでは遠い上に、帰り道ではない。

(道草……?)
俺はもう一度、二人を見遣る。
すると、ククールと目が合い――「何だ、女神サマ?」
どうしようもなく甘い声と、蕩けるような微笑を向けられて俺はギャッとなり、つい反対側へ視線を逃がせばそこでも当然捕まってしまう――「どうした。酔いが回ったか?」
ちょっとした笑いが含まれた声はいつもより甘やかで、鋭い眼差しも柔く笑んでいた。

美形の! この破壊力!
逃げたくても逃げられない。ククールに肩を抱かれ、マルチェロに手を握られているから。(あれ? いつの間に?)

マイエラサンド。
又の名を美形の檻。
俺は心の中でそう名付け、助けを求めるように月を見たが長年の友はあいにくと応えるわけもなく。
ただ俺たちの帰り道を冷たい光で照らすばかり。

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