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龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
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【マル&クク主drago】Irresistible Desire(宣戦・蜂起の舞台裏)

■主人公編

抑えがたき欲望。
下記の狂信者シリーズ?「誰が為~」にて、エイトが巻き込まれた事件の話を書き纏めているのですが、なかなかに文章が繋がっていってくれないのでおちゃにご(お茶を濁す)的な雑記をば。

うたた寝どころか完全に熟睡してしまっていた彼の人の反応を、コンパクトに書き散らし。

(追記)
気分転換でもしてみようと思い、テンプレートを何度も操作してしまったせいか、一時blogの記事がおかしくなっておりました。無駄な試行錯誤の繰り返しはよくないなと自省。






桜の咲く季節が好きだ。
その陽気が好きだ。
さくらんじゅ、というモンスターの存在を知って以降は、更に好きになった。
……一人でも充分な花見が出来ると分かったので。

討伐だか何だかの依頼を受けて遭遇した、人面樹のレアモンスター。
なるべく傷をつけないよう打倒し、「むやみに人を襲うんじゃないぞ」と言い含めてからその場を立ち去った。

……まさか、懐かれるとは思いもよらず。
時々、雛鳥のように後をつけてくるようになった。さすがに人の住む場所に姿を見せるのは拙いだろうと考え、説教を試みた。
言葉と意思の疎通は、果たして成功したのか。一先ずは「他害はしない」という決意をその目に見た……ような気がしたので、信用して放っておくことにした。一応、お前が何か事件を起こせば俺がその全責任を請け負うからなといえば、桜の樹は大きく上下に枝を振ったので、これは「わかった」とでもいう返答だろうか?

そんな「さくらんじゅ」は、微かに香る薄桃の花を咲かせている大樹である。
降らせる花は食用にしても問題はないので、たまに砂糖漬けにするし(おいしい)、東洋の文献にあった「モチに桜の葉を巻いたもの」を作り、それをおやつにすることもあった(おいしい!)。
新しく出来た、春限定の密かな俺の楽しみ。
ちょっとした味覚と視覚の幸せに、その時の俺は浮かれることが多かったように思う。

だから、ついうっかりというか……小用で出掛けた先で、居眠りをしてしまうのだった。


◇  ◇  ◇


【それは青の刻印】


目を覚ませば先ずは肩の辺りが温かくて、それがなんだか心地よかった。
なので思わず身を摺り寄せれば、頭上で含み笑う声がして。
その気配の主は、知っていた。艶のあるその笑い声も聞き覚えがあり、途端に意識が覚醒する。
恐る恐る、そろそろと。
視線を上げていけば――途中で青の色彩が目に入ったところでもう俺は天を仰ぎたくなった――常日頃、厳然とした態度でいるマイエラ騎士団の団長様と、目が合った。

「お目覚めか、女神殿。」
ああ、と。
俺は思わず両手で顔を覆いたくなった。
よりにもよって、マルチェロにうたた寝しているところを見つかるとは。
自分的には「少し疲れたので目を休ませよう」と、目を閉じていただけなのだ。
この小休憩所を選んだのは、ひっそりとした場所に位置しているので目を閉じて座っていても目立つことはないと思ったのだ。
なのに、まさか見つかるとは。
しかも結局は熟睡してしまっていて、あまつさえマルチェロの肩口を枕に遠慮なく凭れかかっていたとは。

穴があったら入りたい。
そしてきっちり埋めてもらいたい。
とりあえず現状を把握した俺はマルチェロに謝罪したが、どういう訳か相手はくつくつ笑いながら肩を竦めただけだった。てっきり、説教の二つか三つくらいは飛んでくるかと思ったのだが。ククールがよくそんな目に遭っているので。

しかし、俺の失態はともかくとして。
何故マルチェロは俺なんかの隣にいて、抱き枕ならぬ寄りかかり枕になってくれていたのだろう?
眠りの海に落ちて舟を漕いでぐらぐらしている情けない俺の姿を見て、憐れに思ったのだろうか。それとも、一応はその職務上、治安を守るためか。(自分の管轄で顔見知りが事件を起こすのはまずいだろう?)
ともかく、俺に分かるのはマルチェロが仕事に真面目で優しい人だということ。
だからお礼を言って、俺のせいで無駄に費やした時間に相当する金額を払おうとすれば――。

「既に払ってもらった。」
そう言葉と共に、柔らかい失笑を返されたので俺は「???」と更なる疑問を抱え込む羽目になった。
あとは、気のせいかもしれないが何だか唇に甘いような――桜の花の砂糖漬けのような風味を感じたのも、謎の一つ。目を閉じる前には、何も口にしなかった……筈、なのだけど。

マルチェロに尋ねてみたが、返されたのはシニカルな微笑。
イタズラの罠を仕掛けた子供のような得意げな顔めいたそれがまた実に格好良くて、追及しようとした俺のなけなし勇気を吹き飛ばしてくれたものだから、この話は俺の情けない失敗談として片付けることにした。


その真実は青い闇に葬られて。



◇  ◇  ◇


【それは赤き刻印】


何だかいつもより背中が温かかったので、その不思議な心地よさと共に目が覚めた。
伸びをしようと身じろいで――動けなかった。脳裏に疑問符を浮かべてぼうっとしていれば、耳元で含み笑う声がして。
美形特有の、艶を含ませたその声には聞き覚えがある、というか――耳元!?
途端に意識が明確になる。だが、そこから先の行動にはなかなか移せなかった。
なにせ、声が聞こえたのは耳元だ。
その近距離。
ならば、この背中の温もりの正体は。
というか知覚できた限りの情報からすると、もしや俺はあのすこぶる美形に背後から抱き着かれた格好でいるのではないだろうか。
こ、恋人がするような……いやいやいや、親が子供を膝に乗せる、みたいな、なんかそういうアレで!
なけなしの勇気を思いきり絞って首を動かせば、肩越し――顔のすぐ横、肩口に美形の男の顔があった。銀色の髪がさらりと耳に触れる。

「おはよう、女神サマ。」
ぎゃっ、と。
両手で顔を隠してそのまま消えたくなった。
よもや、うたた寝しているところをククールに見つかっていたとは。
自分的には「遅くなった昼食をかねて少し休もう」と、腰を落ち着けて空を見上げていたのだ。
この小高い丘を選択したのは、側に顔見知り(?)の魔物さくらんじゅがいたから。それが見張りにも陰にもなって、人目から隠れることになるから丁度いいと思ったのだ。

なのに、どういうことか見つかるとは。
しかも結局は眠り込んでしまい、その上ククールに保護されるような形で守ってもらっていたとは。

穴を深く掘りたい。
そして、そこにしっかり埋めてもらいたい。
ひとまず状況を把握した俺はククールに礼と謝罪を述べたが、相手は肩を揺らして笑っただけだった。
どことなく楽しそうなのは気のせいか。長時間、男に抱き着く形になっていたというのに、だ。
からかいか皮肉の一つか二つは言われるかと思っていたのに。マルチェロと同じように、彼もまた皮肉でつついてくることがある。

それはそうと、俺の醜態はさておいて。
どうしてまたククールは俺の背後に座って、抱き枕よろしく抱き着いていたのだろう?
肩を叩いて起こしてもらっても構わなかったし、それに守るなら俺の隣にいるだけでもいいわけで。
もしかして、俺の寝相が悪かったのだろうか。(自覚はないが、もしそうなら土下座する必要があるのではないかと俺は不安になる。)
とにかく、俺が理解したのはククールが意外と同性にも優しく面倒見のいい人だということ。
なので感謝を伝え、俺のせいで無駄に疲労したであろう精神を回復してもらうべく酒場代を渡そうとすれば、その手を止められて。

「もう貰ってるから要らねえよ。」
そういう台詞と共に、唇を軽くなぞられたので俺の脳は「!?!?!?」と盛大な混乱を起こした。
耳元で囁かれた声音が、気のせいかとんでもない色気があったのも原因の一つ。
それと、雰囲気が尋常ではない程に甘い気がした。
腰に回された腕とか、肩口に乗せられたままのククールの顎とか。俺の髪先をくるくると巻いて弄ぶ指先の、妙な艶めかしさとか、が。
俺はもはやククールの方を見ることが出来ず、相手が飽きるまでじっと耐えることにした。
この現状を打破できるほどの勇気など、俺には欠片も無く。
全ては俺の失態が招いた何かしらの罰だと思うことにして、この話は終わることにする。


その真相は赤い霧に葬られて。



◇  ◇  ◇


狂信徒はそうして女神を自らの腕に閉じ込め、ひっそりと舌舐めずりひとつ。
柔らかく爪を立て、甘露を密やかに味わうその行いを咎める者はなにもなく。

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