■クク主。(病み)
公私ともに不調な時にスイッチが入るとこういうものを書くことになるというサンプル。
たまに改修入れます。(短いのがなんだかどうにも不満な為)
余所見している場合ではないことに気づいて中断。(長引く気配がした為)
柔らかい匂いがする体を、いつものように抱きしめる。
抵抗は、されない。
その腕を頭上でひとまとめにして拘束しているから。
結構、手間がかかった。
なにせ、このキレイな男は暗黒神すら打倒した世界の光。
竜の神さえも素手で殴る、恐らくは最強の人間。
だが、竜人との混血であることがよもや唯一の弱点になろうとは。
「まさかお前にも竜殺しが効くとは思わなかったな」
ドラゴンキラーの特攻を、魔法に変えて。
悟られないよう仕掛けるのには、随分と骨を折った。しかし、苦労の甲斐あって得たものは両手以上の幸運。抱えきれないほどの。
もっとも、今から存分に抱くのだが。
「もうちょっと本気で殴ってくれても良かったんだぜ?」
兵士の特性か、敵意に反応してこぶしを握ったその男は、けれど相手がかつての仲間でありついさっきまで談笑していた友人だと気づいた瞬間に、攻撃の手を緩めてしまった。
お人よしの兵士長は、そのまま。
優しいところは変わっていない。
だから、変わったのはこちらのほうなのだと告げるまでもなく、お人よしの男は竜殺しの魔法を受けて自由を奪われてしまうのだ。
愚かにも。全ては愛しすぎる優しさゆえに。
「さすがに動けないだろ? ははっ。俺も勉強したんだぜ。な、偉くねえ?」
褒めてくれてもいいんだぜ、と顔を近づけて囁けば、拘束を受けて寝台に横たわる男の視線が鋭くなる。
美人が本気で怒ると恐ろしいのだと知ったのは、この男の――エイトのせい。
美に対する価値観を、存在を、根底から塗り替えてくれた忌まわしくも愛しい氷の美貌を持った男。
「何か言いたげだな? 何でも言ってくれ。というか、そろそろ俺はお前の声が聴きたいんだけどな?」
更に顔を近づけて。吐息が触れる距離まで近づけば、エイトが僅かに眉根を寄せて口を開く。
「何を考えている」
「――ッハ! お前、それ本気で聞いてるのか?」
おいおい女神様、この状況でそれは違うだろ?
「お前のことしか考えてないに決まってるだろ」
そう笑って返せば、その瞳が驚愕したように大きく見開かれる。
ああ、やっぱりこいつは何をしても綺麗だよなあ、なんて。
考えていたら条件反射のように口づけていた。深く。
短くくぐもる抗議めいた声を無視して舌を絡め、唾液を流し込んでやればエイトがびくりと体を強張らせるのが伝わり――興奮した、と言ったらどういう顔をするだろう?
長い蹂躙の後で解放してやれば、うまく息継ぎができなかったらしいエイトが顔を横に向けてゲホゲホと咽た。
大きく上下する肩、乱れた呼吸。口端からだらしなく零れ伝い落ちている唾液はエイトのものか、それともこちらのものか。
「なあ、エイト」
両手を拘束された格好で咳き込んでいた男の名を呼べば、視線だけが向けられたのでそれをじっと見つめ返して笑いかける。
少し順番を間違えたけれど、これだけは言っとかなきゃな。
「愛してる」
そう言って銀色の獣は微笑み、舌を舐めずってその白い肢体へ上体を傾ける。
いただきます。
そんな言葉と共に放り投げられた銀色のロザリオが宙を舞い、部屋の隅へ音を立てて落ちた。
[1回]
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