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龍宴庭note

突発小話&気まぐれ雑記用。 詳細などは「Category」→「★ABOUT」に記載。
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【テリ主】夜の帳に包まれて、二人

■ふと思い浮かんだので、テリ主雑記。

本当は年内に上げたかったけれども、寸での差で間に合わなかったので新年更新に。
主人公は王子に戻り、テリーは聖騎士となってます。
(Paladin RoadのBAD回避設定)

短いですが、宜しければ「続き」よりどうぞ。






側に人の気配を感じて、ふと目が覚めた。

「なんだ、起きたのか。」
右側で、声。ゆっくりと顔を上げれば、青い瞳と視線が合う。
「おはよう――いや、まだ夜だからこんばんは、か。結構ぐっすり眠ってたな、王子サマ。」
「テリー……? 俺――?」
「ここがどこだか分かるか?」
「ああ……。」
思い出した。
新年を迎える為のパーティーの最中、少し風に当たりたくてテラスに出たのは良かったが、なんとはなしに星を眺めている内にそのまま眠ってしまったのか。
「ワインをちょっと飲み過ぎたか……ふわあ――、ふ。」
欠伸をし、指先で目元を擦って眠気を飛ばす。すれば、肩口から何かがするりと滑り落ちた。
「あれ。」
見れば、それは少し厚手のマント。濃いワイン色をしたそれは、数日前にテリーが「どうだ、これ!」と言って、披露してきたものだった。得意げな子供が重なり、つい笑いそうになったがそこはどうにか耐えたことは記憶に新しい。
そんな、新調したばかりで汚れのないマントが、今はエルドの防寒具に。
「いいのか、コレ。高かったやつだろう?」
そう言いながら、テリーに返そうと、マントに手を掛けた時だった。
「いいから、そのまま被ってろ。」
「わぷ。」
テリーはマントを広げると、まるで品物をラッピングするかのようにエルドの体に巻き付けた。
「なにも、ぐるぐる巻きにしなくても。」
「そうしたほうが温かいだろ。ただでさえ、こんなところでうたた寝していたんだからな、お前は。」
テリーが呆れた顔をして、エルドの隣に座り直す。
「一人で行動する時は俺を呼べって言っただろう。」
「あー……、うん。でも、テリーは警備も兼ねてただろう? 忙しそうだったし――」
「こんな寒い中で目を閉じて動かないお前を見つけた俺の気持ちが分かるか、王子サマ? ……心臓が止まるかと思った。」
「……ごめん。」
広間に満ちた空気に酔ったのか、それとも酒精が過ぎて酔ったのかは分からない。
ただなんとなく外の空気が吸いたくなったので、テラスに足を運んだだけなのだが……冷静に考えると、テリーが正しい。少し前の「田舎から出て来た冒険者」ならともかく、いまはもう大国の王族なのだ。自ら無防備になるのは、あまり良いことではない。

「ごめん、本当に悪かった。」
ぐるぐる巻きの状態で、隣に居るテリーに寄りかかる。
「無駄に心配かけてごめんな、聖騎士サマ。」
「……バカ。」
テリーがエルドの肩に腕を回し、そのまま抱き寄せる。
頭をこつりとぶつけ、囁く。

「お前に何かあれば、俺はこの世界の敵になるからな。」
「……俺の聖騎士サマは物騒だな。」
守り人の冷たい宣告に、王子は苦笑を浮かべて視線を向ける。

「お前もこの世界も俺は愛しているんだ。だから、壊さないでくれよ。」
「……。」
相手はツンとして、答えを返さない。そこは譲れないところなのだろう。
テリーはエルドと契約して聖騎士となったが、忠誠を誓っているのは王家ではない。いま彼の隣でミノムシ宜しく保温されている、格好がつかないながらも――もとより、外見には無頓着だが――大国の王子サマ、ひとりきり。
孤高の剣士。魔王の一人と共に行動し、力のみを求めていた男がまさかこうも一人に執着するとは、過去の彼は思うまい。
エルドは苦笑を深め、上体を伸ばして彼に顔を近づける。
「なあ、テリー。」
「……なんだよ。」
ソッポを向きつつも、素直に視線を戻して目を合わせてきたテリーに、エルドはにっこり微笑む。
「ちょっと冷えてきたから、話の続きは中でしないか?」
「中って……広間に戻るのか? お前、体調は?」
「うん、まだよくない。」
「じゃあ――」
「――だから、俺はここでもう抜けちゃおうかと思って。」
「は!? 王族が抜けても大丈夫なのかよ?」
「俺が体調を崩したことにするよ。」
それに、母上にフォローを頼んでおくから、と――そう言ってから、言葉を続ける。

「そういうことなので――俺を部屋へ運んでくれないか、聖騎士殿?」
王族の声音で告げたのは、悪ふざけの誘い。
唐突な命令に、テリーは目を丸くしたものの――すぐに不敵な笑みを浮かべて。
「了解。……添い寝も必要ですか、王子サマ?」
「ふ、……ははっ。――添い寝だけでいいのか?」
なんだよ、その返しは。
きりりとした聖騎士の顔は一瞬で剥がされてしまい、テリーは子供のようにむくれる。
「……、……よくない。」
やはりこの王子サマは狡い。
けれど、意地を張ってもしょうがないとすぐに落ち着く。
この時間を無駄にしたくない。一刻、一秒、刹那まで、エルドの側に居たいのだ。
「何があるか分からないんだし、今夜はずっと俺を側に置いておけばいい……、と思う。」と、テリーがそんな提案をすれば、相手が抱き上げた腕の中でくすくす笑う。
「そうだな。良案だ。」
相手の言葉を首肯した王子サマは、ちょっと首を伸ばして軽いキスを一つ。

「……っ、部屋に戻ったら覚悟しとけよ、エルド。」
「あはは。お手柔らかに。」
歩く速度を速めた聖騎士に穏やかな笑みを返し、そうして王子は密かに寝室へと運ばれていくのだった。

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